吉村順三作 八ヶ岳高原音楽堂のご紹介

SUNRISE-arc株式会社(R+house松本店) 設計の原です。

 

今回は「八ヶ岳高原音楽堂(1988年竣工)」を紹介したいと思います。

その建物は長野県南佐久郡南牧村の八ヶ岳高原海の口自然郷にあります。

アクセスは、近くの宿泊施設「八ヶ岳高原ロッジ」を目指します。

 

設計した建築家は吉村順三さん。

巨匠と呼ばれるような、建築界では有名な人です。

長野県内には他に吉村順三さんの代表作で有名な別荘建築の「軽井沢の山荘」や、軽井沢にある脇田美術館に隣接する「脇田和のアトリエ山荘」などがあります。

 

この八ヶ岳高原音楽堂は八ヶ岳の東山麓にある別荘地の中に建っています。

鉄筋コンクリート造の柱や壁に木造の屋根が載った混構造の建物です。

 

駐車場に車を停めて、森の中を少し歩いてアプローチしていくと、二つのトップライトが特徴的な建物が見えてきます。

 

平面に6角形を取り入れていることも外観を特徴的なものにしています。

建物に近付くと、コンクリートの柱で支えられ、軒先を低く抑えられた木造の美しい屋根が目に入ります。

 

その屋根を支える柱は建物の平面に合わせて六角形の断面。

また、外部の打放しコンクリートの柱や壁にはスギ板の型枠が使われていて、コンクリートの表面に木目が現れ、硬いコンクリートの表情を和らげています。

軒天井はカラマツでしょうか。

 

ホワイエに入るとトップライトからの光が優しく降りそそぎます。

内装にもふんだんに木が使用されています。

住宅でも板張りの壁や天井を採用することがありますが、とても雰囲気が良くなりますね。

 

お待ちかねのホール内部は外周部の天井が低く抑えられて、客席部分が吹き抜けています。

 

床も客席部分が1段下がってより天井の高さを感じさせます。

天井の中央にはトップライトがあり、ここにも柔らかな光が降りそそぎます。

そして、大きなガラス越しの森を背景にステージがあり、いやがうえにも期待感が高まります。

 

ホールを取り囲むガラス戸は両サイドの壁に引き込まれた板戸を閉めることで光や音の調節ができるようになっているようです。

その板戸や板張りの壁にはさらに仕掛けがあって、部分的に、仕上げの板を裏返すと布の張られた吸音板が現れて、残響時間なんかを調整できるみたいです。

音楽にはそれほど詳しくありませんが、音響面でもとても優れたホールだそうです。

 

客席は同じ建築家がデザインした「たためる椅子」。

いい感じに使い込まれた椅子はとても良い座り心地でした。

この椅子が目的で訪れる人もいるのではないでしょうか。

 

照明もとてもきれいです。

この建物のためにデザインされたものでしょう。六角形がモチーフになっています。

(ちょっとフランク・ロイド・ライトっぽい。そういえばライトも平面に六角形のグリッドを取り入れたことがあったっけ。)

 

このホールでは年間を通していろいろなコンサートが開催されています。

ちなみに、私が鑑賞したのは「八ヶ岳カラマツ・チェンバロ コンサート」

長野県の川上村で育った樹齢110年のカラマツ材を使用して製作されたチェンバロだそうで、年に何回か開催されているコンサートです。

 

とにかく、その建物も、建物が建っている環境も、そこで演奏される音楽も、そのすべてが素晴らしい音楽ホールです。

皆さんもぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。

 

施工事例 : https://sunrise-arc.jp/orderhouse/works/

アーキテクトマガジン : https://andarchi.net/cec/sunrise/

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